日常生活の中にみるリスク管理
   

 

■なぜリスク管理が必要なのか

 会社の経営には、顧問税理士や経営コンサルタント、はたまた弁護士などに相談することによって、経営上の多くの問題点を定期的に専門家の目を通して発見し、それを解決し健全な会社経営ができるものであることは周知の通りです。
 
  企業戦士として頑張るあなたは、家庭のことを妻任せにして、ただひたすら働き続けたりしてはいませんか。あなたが、あなたの家庭を、企業と同様に一つの組織として考えるならば、その家族を守り、豊かでゆとりのある笑いの耐えない楽しい家庭であるために何を考え、なにをしなければならないのかを、家族全員で話し合うことが必要ではないでしようか。

どんなすばらしい企業に働いていても、病気になってしまったら・・・
どんなに元気で働いていても、家族が病気になってしまったら・・・
どんなにすばらしいマイホームがあっても、会社が倒産したら・・・
 
めまぐるしく、しかも大きく変化する社会の動きの中で、貴方とあなたの大切な家族をどのようにしたら守ることができるのかを、さまざまな事例から考えてみてはいかがでしょうか。


■もしも・・・
どんなすぱらしい企業に働いていても、自分が病気になってしまったら…
貴方がどんなに元気で働けていても、家族が病気になってしまったら…
どんなにすばらしいマイホームがあっても、会社が倒産したら…
どんなにすばらしいマイホームがあっても、地震や火災で家が損壊…
ある日突然に見知らぬ債権者が借金の取立に押しかけてきたら…
バラ色の家庭を夢見ていた夫婦に、ある日突然離婚の危機が迫ったら…
                     …貴方ならどうしますか?

 

■リスク管理をしてなかった為に起きたトラブル事例

【事例1】

 都内在住の65才の男性A氏。バブル最盛期の平成元年頃、A氏が大手企業に取締役として就任中、銀行からの勧めで相続対策を考慮して事業用不動産の購入をすることにした。当時の実勢価額にして約1億5千万円の自宅を担保に、都市
銀行から約1億円を借り入れ、5つの事業用不動産を購入する。
  ただし、A氏が高齢であったため、A氏の相続人全員(妻、子供2人)が連帯保証人となることが借り入れの条件であった。
  横浜市、越谷市、千葉市、京都市、大阪市にワンルームマンションを購入し、毎月約20万円の持ち出しではあったが、年金のほかに再就職先からの収入もあったのでしばらくは難なく返済をしていた。
  しかし、バブルが崩壊が始まったころから、事業用不動産の賃貸料が更新のたびに値下がりし、支出の負担が大きくなる一方となった。いつしか貯蓄や退職金も底を尽き、銀行へ返済する現金を調達するために、消費者金融やカードローンで借り入れをしてやりくりをしていた。だが、お決まりのパターンとして金利の高い消費者ローンからの借り入れは残高が増える一方。A氏の手の内は全て尽きてしまったので、息子さん名義のカードローンを利用して更に借り入れることになり、返済のあてのない借入金がますます増えるばかりとなった。
 

 

【事例2】

 都内在住の78才になる女性B。夫からの相続を受けた自宅に息子夫婦と同居していた。息子の経営する会社の資金繰りのため、Bが連帯保証人となり会社が銀行から借り入れした。しかし、経営はいっこうに改善されずいつしか街金融から借り入れして資金繰りを間に合わせる状況にまでなっていた。息子は街金融の返済や督促で仕事が手につかず、苦痛な毎日を過ごし、
とうとう病気になってしまった。 そこで、事業も好転しないので思い切って会社を清算することにし、問題の多い街金融だけには更に親戚から借り入れして返済。
  だが、会社を清算することによって、母親名義の自宅が銀行への抵当物件として差し入れられているので、Bの所有する自宅は銀行の手に渡り・・・。
  会社の清算後は住み慣れた家を引き払って賃貸住宅に住まなければならない状況となった。

 

【事例3】

 埼玉県在住の結婚10年目の男性C。妻と小学1年生の長男と4才の長女との4人暮らし。2年前に少々きつい資金繰りを承知で住宅ローンを組んで自宅を購入した。Cはスポーツマンで病気などしたことがなかったが、会社の健康診断で重度の肝臓疾患であることが判明。1年間の療養が必要であると告知された。労災も適用されない上、会社からの給与の支払も半年で打ちきりとなった。
  しかし、さほどの蓄えもなく、妻が勤めに出ても生活費がやっとで、住宅ローンが滞りがちとなった。両親からの援助もあったが きつい資金繰りであったためとうとう返済が不可能となってしまった。
  やっとの思いで購入したマイホームを引き払わなければならないこととなったが、売却金額ではローンの残金が埋められず負債が残ってしまった。

 

■あなたの身の回りにある「リスク」とそのチェックポイント
(1) 家族が死亡してしまった場合

◆誰が? 誰の?
 ・祖父母、両親、夫、妻、子供、孫、親戚、  友人、愛人、非摘出子?

◆死に方?にもいろいろ
 ・突然死(自殺、過労死)
 ・病 死(原発性の病死、感染性の病死)
 ・事故死(交通事故死、災害事故死)
 ・自然死(老衰死、衰弱死)

§チェックポイント§
 ・家族の死と生活設計(ライフプラン)
 ・生活必要経費の定期的な見直し
 ・生命保険の定期的な見直し
 ・相続関係人の確認、家計図の作成
 ・被保険者、保険受取人と相続税対策
 ・日常生活での健康管理
 ・掛かり付けの主治医の選択
 ・遺伝性の特殊疾病の認識
 ・安全管理と危機管理の徹底
 ・家族の交友関係の確認

   
(2) 家族が病気になったり怪我をしてしまった場合
◆どんな立場の人か
  ・収入を支える人の病気
  ・将来のある人の病気
  ・老人の病気(痴呆症等)
◆どのような状況にある病気か
  ・完治する病気か
  ・長期療養となる病気か
  ・完治の可能性のない病気か
  ・死に至る病気か
§チェックポイント§
 ・家族関係のあり方について考えておく
 ・保険による治療費や入院費に対する備え
 ・収入が途絶えたり減少したときの備え
 ・被害事故の場合の相手先との交渉
 ・長期療養となった時の費用の備え
 ・介護は誰がどのように行い、費用はどうするのか
 ・何処でどのように過ごすのか
 ・住宅の改造を必要とするのか
 ・地元行政機関の老人や障害者に対する対応の確認
 ・成年後見制度についての検討
   

(3) 自宅家屋が火災で消滅、災害で倒壊、損壊してしまった場合

 ・自宅からの出火による火災
 ・隣家からのもらい火による火災
 ・地震、津波などによる倒壊や火災
 ・交通事故による家屋の損壊

§チェックポイント§
 ・損害保険の定期的見直しで補償の確認
 ・消化設備の定期点検
 ・建築設計上の問題はないか
 ・住宅の耐火構造の検討
 ・地震保険への加入と補償の範囲
 ・敷地の地勢に問題はないか
 ・周囲環境に対する心構え
   
(4) 債務超過(収入を上回る負債がある)となってしまった場合
 ・住宅ローンの借入金
 ・勤務先からの借入金
 ・カードローンの借入金
 ・消費者金融からの借入金
 ・親戚、友人など個人からの借入金
§チェックポイント§
 ・借入金総額と弁済金額の定期的な見直し
 ・借り入れ先による返済の優先順位
 ・返済可能な借り入れであるか
 ・金利と借り替えの対策
 ・収入が途絶えたり減少したときの対策はできているか
 ・目的が明確でない借入金はないか
 ・親戚間の人間関係にヒビが入らないか
   
(5) 貸したお金が貸し倒れ金となってしまった場合

 ・貸した相手が死亡してしまった
 ・貸した相手が行方不明になって
  しまった
 ・貸した相手に返済能力がなくなっ
  てしまった

§チェックポイント§
 ・使途が明確な資金への貸付か
 ・金消(金銭消費貸借契約書)契約に保証人を立てたか
 ・公正証書として作成してあるか
 ・不動産などの担保を設定した貸付契約か
 ・貸し倒れとなっても困らない範囲の金額か
 ・友人への貸付はその友人を失うことを覚悟せよ
 ・公共機関からの借り入れをアドバイスしたか
 ・万一の時に相談できる弁護士はいるのか
 ・借り入れしたお金を他人に貸してはいないか
   
(6) 連帯保証人となっていたので債務保証を求められた場合
 ・債務者が法人か個人(親戚、友人、
  子供、妻)
 ・債務者が破産者となってしまった
 ・債務者が死亡してしまった
 ・債務者が行方不明となってしまった
 ・債務者に返済能力がなくなってし
  まった
§チェックポイント§
 ・保証できる範囲内の連帯保証金額か
 ・保証金額が固定的な保証契約か
 ・債務者の行動に信用不信となる行動はないか
 ・契約途中でも保証人の立場を断れないか
 ・税務上の特例は適用できるか
 ・最終的に回収可能なのか
   
(7) 会社が倒産したり解雇または解任されてしまった場合
 ・希望退職者の対象として指名された
 ・勤務先の倒産による解雇
 ・取締役の職を解任された
§チェックポイント§
 ・雇用保険の適用がある会社か
 ・雇用保険の保険料が支払われている会社か
 ・退職金は支払われるのか
 ・収入がゼロとなったときの蓄えはあるか
 ・年金の受給開始年齢までの備えはあるか
 ・ローンの返済は継続してゆけるのか
 ・取締役の雇用に対する身分保証を認識しているか
 ・再就職の為の資格または技能を身につけているか
   
(8) 離婚となってしまった場合
 ・協議離婚による
 ・離婚訴訟が長期に長引いている
 ・子供または両親などの問題
§チェックポイント§
 ・妻の経済的な裏付けはあるのか
 ・財産は話し合って分けられるのか
 ・個人年金は各々の名義で契約しているか
 ・それぞれの健康管理は万全か
 ・分けられる財産の持ち方をしているか
 ・負債に対する責任は誰が承継するのか
 ・事業などに影響はないか
 ・社会的な信頼を継続できるか
   
(9) 事故や傷害の加害者側になってしまった場合
 ・物損事故をおこしてしまった
 ・人身傷害事故を起こしてしまった
 ・人身死亡事故を起こしてしまった
§チェックポイント§
 ・損害保険の補償範囲を認識しているか
 ・保険料の支払はきちんとしているか
 ・保険の更新手続きを怠っていないか
 ・相手方に対して誠意を持った行動をしているか
 ・保険の補償を受けられない条件を認識しているか
 

■リスクに備えた日常の心構え

・「ライフプラン表」作成のすすめ

・年1回の家庭の「清算貸借対照表」の作成

・損害保険、生命保険を定期的に点検・見直しをしておくこと

・家族の定期的な健康管理は出来ていますか

・フロー資産とストック資産のバランスを考えておく

・自宅の不動産等をみだりに担保に提供しない

・妻や家族は夫のリスクを一緒に背負わない

・万一のためには現金化しやすい資産の持ち方をしておく

・日頃から相談できる専門家を持っていること