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Vol.108

 
 


●「被害者意識」は、その人が原因を作っている?…

頻繁にある事例ではないのですが、相談者の中に『被害者意識』が強すぎるがために、問題解決のルーチンに入ることができずカウンセラーにとって試練の時と暫く様子を見ます。

 経営破綻に直面したとき、発注量を減らしてきた親会社の問題と嘆いたり、金融機関の対応を恨んだり、社員の行動を批判したり、その人の“被害者意識”は周囲のあらゆる人々に向けられているから始末が悪い。

 その人が“被害者意識”に陥っている状況とは、自分がしていなければならない事を投げ出している状態になっているのです。

 本来ならば自分がしなければならないことなのに、自分にその処理能力が無いと感じたとき、突如、被害者の立場に回り、周辺にいる関係者に問題を処理させようと働きかけ、責任放棄をした本人は“被害者”(弱者)として振る舞うので、周囲の関係者は問題を放置しておくわけにもいかず、援助を強要される形になることを当然のことのように見ているのですから困ったものです。

 “被害者意識”の強い人は、自分の人生を自分自身の力で切り拓こうとしている人ではなく、自分の人生を、いま対峙している相手に委ねて(=支配されて)いる状況にあるのですから、何処かで解決していかなければなりません。

 強く抱いている“被害者意識”を取り去る方法としてカウンセリングでその人の感情を肯定と共感して、徐々にその意識を取り去るのは当然ですが、私の場合は『O TAIL ring Test(オーリングテスト)』を何度か繰り返し、それまで対峙していた人達への敵対心を小さくしていくという作業をします。

 あるカウンセラーセミナーにおいて、相模女子大学・石川勇一教授の『被害者意識はその人が原因を作っている…』という言葉が大変印象的でしたが、原因を取り去る作業には“一定の時間”と“信頼関係の構築”が不可欠のことであると思っています。

 今まで直面したことがない事態に接したとき、普通の人なら気が動転して、混乱するのは当たり前のことだから、カウンセラーが受容できる器さえもっていれば、事態の収拾は用意であると考えられます。


●「起きたトラブル」の解釈で苦しんでいる…

どんな大きな問題であっても所詮人間社会で起きた問題であれば、何らかの方法で解決することができるはずである。 

 宇宙観で捉えれば、地球には北(N)の磁極に対して南(S)の磁極があり、夜の時間は永遠ではなく必ず昼の時間がやってくる。大自然が織りなす地球自身の営みを変えることはできなくても、それらの恩恵を受けることなら誰にでもできることである。

 ましてや、トラブルの大小を問わないまでもなく、その原因の殆どは人間自身が生み出したものばかりですから、自分の心の持ち方一つでどのようにも解決できるものばかりです。

 ふたたび石川勇一教授の言葉になりますが、人々は『起きた問題の事で苦しんでいるのではなく、出来事の解釈で苦しんでいる』と談じている。

 トラブルが起きたとき、起きた問題の本随について苦しみ悩んでいる人は殆どいないだろう。起きた出来事の解釈は人様々であって、個々の人の立ち位置が異なるだけでも受け止め方は大きく異なるから厄介なのだが…。まさに『一月三舟』の例えそのものだ。

 「止まっている舟から見る月は動かず、南へ行く舟から見る月は南に動き、北へ行く舟から見る月は北へ動くように見える…」ということだが、受け止め方一つで解釈が変わるということだから、冷静になってそれぞれの立場で解釈することによって、怯えたり、恐れたり、苦しんだりする必要が無かったことなのかも知れないのに、混乱するのも人間だからなのだろうか。
 
 「分け合えば余り、奪い合えば足りない…」「相手の立場で考えてみる…」などと相続トラブルなどの問題解決の際に使う言葉ですが、競わなければ楽な人生なのに…と思うのです。